テレアポとインサイドセールスは、同じように電話を使っていても、担っている仕事が割と違います。この違いを曖昧にしたまま営業組織をつくると、インサイドセールスという名前の部署を設けたものの、実際には架電数とアポイント数だけを追いかける組織になってしまいます。
テレアポには、AIでも担える領域があると思います。業務の範囲を絞り、案内する内容や確認事項、日程調整の条件を整理すれば、自動化できる部分は出てきます。すべての電話営業が簡単に置き換わるという話ではありませんが、個別の作業についてはAIの活用を検討する価値があります。
一方、インサイドセールス、以下ISの仕事には、内勤の営業として顧客の検討を進め、パイプラインを生み出す役割があります。過去の商談内容を読み解き、見送りになった理由を確認し、適切なタイミングで対話を再開する。そして、NA、つまりネクストアクションを一つずつ積み重ねて、具体的な案件につなげていく。ここまでを任せきるとなると、難しさはかなり変わります。
その土台がない会社は、まず接点と商談履歴を増やすところからです。テレアポなどで見込み顧客と出会い、商談を行い、情報を残す。その積み重ねをISが継続して運用できるようにすることで、新規開拓と追客がつながっていきます。
01テレアポとISでは担う役割の範囲が違う
テレアポは、電話を使って商談の機会をつくる活動です。狙った企業に接触し、担当者につながり、話を聞く理由をつくり、アポイントにつなげる。とくに、自社をまだ知らない相手との最初の接点を増やすうえで、大切な役割を持っています。
ISは、電話やメール、オンライン会議などを使って進める内勤の営業活動です。接点をつくることに加えて、顧客の課題を把握し、情報提供やヒアリングを重ね、商談や受注に向けた検討を進めていきます。Salesforceも、ISの役割として初回アプローチ、見込み顧客の育成、商談につながる見込みの判定を挙げています。[1]
違いが表れやすいのは、顧客から「今は必要ありません」と言われた後です。
アポイントを獲得する役割に集中している場合、その時点で今回の接触を終え、別の企業へのアプローチに移る判断があります。一方、継続的なISでは、その言葉の背景を確認する価値があるかを考えます。課題そのものがないのか。課題はあるけれど優先順位が低いのか。予算の時期が合わないのか。別の会社との契約が残っているのか。この違いによって、次に取るべき行動が変わるからです。
もちろん、実際の業務には重なりがあります。テレアポでも深いヒアリングをすることはありますし、ISが新規の電話営業を担うこともあります。ISには、新規開拓を担うBDRという役割もあるため、過去のリードを追うことだけがISではありません。[1]
この記事でとくに取り上げたいのは、過去の商談情報を持つリードを継続的に運用し、再商談や案件化につなげるISです。ここを明確にすると、必要なデータ、人材、KPI、AIに任せる範囲が整理しやすくなります。
02ISがザ・モデルの要になる理由
ザ・モデルは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなどの役割を分け、連携して事業を伸ばすための考え方です。福田康隆氏の著書『THE MODEL』も、各部門の仕事を個別に説明するだけでなく、全体のプロセスと共業を扱っています。[2]
ここでISが担うのは、マーケティングがつくった接点を、営業が具体的に検討を進められる案件へつなぐ役割です。資料請求があったからといって、その会社がすぐ購入できるとは限りません。情報収集を始めたばかりの場合もあれば、課題は明確でも予算や社内体制が整っていない場合もあります。
その状態を確認せず、すべてを営業に渡せば、営業は検討時期の異なる相手に同じような提案を繰り返すことになります。反対に、すぐ受注しそうな相手だけを残すと、今後検討が進む可能性のある顧客との接点が途切れてしまいます。
ISは、その間を継続して担当できます。今、具体的な商談に進める相手を見極める。まだ早い相手には、その会社の課題に合った情報を届ける。以前の商談で止まった相手については、何が変われば再開できるかを確認する。顧客ごとに異なる検討のペースに合わせて、営業活動をつなぎます。
さらに、情報は営業へ渡して終わりではありません。商談の結果、予算が合わなかったのか、機能が不足していたのか、社内合意が取れなかったのかを戻してもらい、次の接触に反映します。同じ見送り理由が続くなら、マーケティングの訴求やターゲット、提案内容の見直しにもつなげられます。
こうした接点と情報の循環を動かす役割があるから、ISはザ・モデルの要だと考えます。部署間をつなぎながら、顧客の状況に合わせて営業の時間軸を調整する機能です。
03パイプラインを前進させるとはどういうことか
ここでいうパイプラインは、受注に向けて検討が進んでいる案件を、段階ごとに把握するものです。単に連絡先がある状態、打ち合わせの予定が入った状態、具体的な導入を検討している状態は、それぞれ分けて考える必要があります。
たとえば、「来週30分話を聞いてもらえる」だけでは、その案件の課題や検討時期はまだ分かりません。一方、「営業管理の課題が確認でき、改善の責任者が決まり、来期予算に向けて選択肢を比較することになった」という状態なら、検討が具体的に進んでいます。
ISが見るべきなのは、その変化です。顧客の課題が具体化したか。関係者が分かったか。社内で比較する条件がそろったか。導入に向けて確認しなければならないことが明確になったか。売り手が何回接触したかに加えて、買い手の検討がどう変わったかを把握します。
この役割の範囲は、会社によって調整が必要です。商談化までをISが担当し、その後はフィールドセールスが責任を持つ会社もあります。商談後もISが資料の案内や関係者との調整を支援する会社もあるでしょう。どちらでも、同じ案件に複数の担当者が別々の連絡をしないよう、主担当と次の行動を共有することが欠かせません。
ISに求めたいのは、担当する範囲の中で、顧客が次の判断に進める状態をつくることです。商談を生み出すことと、その後の検討につながる情報をそろえることを、一続きの仕事として考えます。
04リサイクルリードは過去の商談を次の機会につなぐための資産
この記事でいうリサイクルリードは、一度は商談したものの、その時点では受注に至らず、将来の再検討に向けて継続的なフォローの対象とする見込み顧客です。
たとえば、サービスへの関心はあったけれど予算がなかった会社。既存契約の更新前にしか切り替えられなかった会社。現場の担当者は必要性を感じていたけれど、社内の優先順位が上がらなかった会社。こうした相手は、見送りの理由となった条件が変われば、再び検討できる可能性があります。
ただし、一度商談した相手をすべて追いかければよいわけではありません。事業内容が合わない、必要な要件を満たせない、今後も解決できる見込みがないという場合は、追客の優先度を下げたり対象から外したりする判断が必要です。連絡を希望しない相手を、件数を保つために残すような運用も避けます。
「予算がない」という記録も、そのままでは粗すぎます。予算を確保する価値が伝わらなかったのか、今年度の予算を使い切っていたのか、部署単独では決められなかったのか。理由が異なれば、再接触のタイミングも、準備すべき提案も変わります。
リサイクルリードの価値は、過去の対話を次の会話に引き継げることにあります。相手が一度話したことを毎回説明し直す必要がなくなり、営業側も前回の課題や検討条件を起点に話を進められます。
もちろん、過去の情報が現在も正しいとは限りません。担当者が異動していることもあれば、課題が解決済みになっていることもあります。履歴を踏まえて仮説を持ち、現在の状況を確かめる。その更新まで含めて、リサイクルリードの運用です。
05最低一回の商談データには何を残すべきか
「商談履歴がある」という条件は、カレンダーに面談予定が残っていることでは満たせません。実際に商談が行われ、その内容を別の担当者が引き継げる状態が必要です。
最低限、次のような情報を残したいところです。
- いつ、誰と商談し、その人はどのような役割だったのか。
- 顧客が何に困っていて、どの課題を優先していたのか。
- 自社から何を提案し、どの点に関心や懸念があったのか。
- 何が理由で見送り、保留、失注になったのか。
- 予算や既存契約、社内検討の時期について何が分かっているのか。
- どの条件が変われば、再び検討できそうなのか。
- 次に誰が、いつ、何を確認するのか。
分かっていない項目を無理に埋める必要はありません。顧客が話した事実、営業側の仮説、未確認の事項を分けて記録します。「おそらく予算不足」という推測が、いつの間にか確定した失注理由として扱われると、その後のアプローチを誤ってしまいます。
とくに残しておきたいのが、当時の判断理由です。「失注」という結果だけでは、次の担当者は何を変えればよいのか判断できません。「既存会社との契約が来年3月まで残っており、年内に比較を始める可能性がある」と分かれば、確認すべき時期も話題も具体的になります。
商談データは、次の営業担当者が顧客を理解するために残します。記録の量を増やすより、次の判断につながる内容をそろえることが大切です。
06NAを積み重ねるとは次の判断を具体化すること
NAはNext Action、ネクストアクションの略です。ISでは、顧客の状況を踏まえて次に行う行動を指します。
ただし、「来月電話する」「資料を送る」「しばらく様子を見る」だけでは、行動の目的がはっきりしません。何を確かめるための電話なのか。どの判断を助けるための資料なのか。何が起きるまで待つのか。ここまで決まって、次の営業活動につながります。
たとえば、「来月電話する」という予定を、「来期予算の検討が始まる前に、担当者へ現状の課題と比較条件を確認する」と具体化します。さらに、担当者と確認日を合意できれば、接触する理由が顧客にも伝わります。
実務では、NAに実行する人、期限、相手、目的、確認できたら次に進める条件を持たせると整理しやすくなります。「10月20日までにIS担当が現場責任者へ連絡し、導入時に心配している作業を確認する。懸念が整理できたら、営業担当と試行プランを検討する」といった形です。
すべてのNAで商談が一段階進むわけではありません。新たな懸念が見つかって、一度立ち止まることもあります。検討がなくなったと分かれば、追客対象から外す判断につながる場合もあります。状況を正確に把握し、次の判断ができるようになることも、NAを実行する意味です。
一方で、社内のタスクが完了したことと、顧客の検討が前進したことは分けます。「資料送付済み」は活動の記録です。「資料を使って部内で比較することになった」「予算責任者との打ち合わせが決まった」という変化があれば、検討の進展として確認できます。
ISは、その違いを見ながら次のNAを設計します。顧客と合意できた行動と、営業側が予定しているだけの行動も区別しておくと、案件の実態をつかみやすくなります。
07予算時期で見送られた商談を再開する例
ここからは、運用を具体的に考えるための架空の例です。
広告運用の支援を提案したものの、「今期は予算が決まっているので難しい」と見送りになった会社があるとします。そのまま毎月「その後いかがですか」と電話しても、予算の制約が変わっていなければ、同じ返答が続く可能性があります。
まず確認したいのは、来期予算の検討がいつ始まり、誰が判断し、どのような数字が必要になるのかです。予算が確定してから連絡しても、すでに依頼先や使い道が決まっているかもしれません。
仮に、11月に来期の予算案をまとめると分かったなら、その前に検討材料を用意できるようNAを組みます。10月上旬に現在の広告費や問い合わせ状況を確認し、中旬に改善の方向性を整理する。担当者が社内で説明するために必要な資料を確認し、必要なら予算責任者も含めた打ち合わせを提案します。
ここでは、顧客から共有された実績と、営業側が試算した見込みを分けることも大切です。根拠が薄い効果予測を置いて無理に予算を取っても、その後の信頼につながりません。現状のどこを変え、何を検証する提案なのかを整理します。
一連のNAで目指すのは、再度アポイントを取ることに加えて、顧客の予算検討に必要な情報と関係者をそろえることです。前回の見送り理由を踏まえているからこそ、再び話す意味が生まれます。
08社内合意で止まった案件を前進させる例
もう一つ、営業DXの導入を提案した場面を考えます。担当者は前向きだったものの、「現場が使いこなせるか分からない」「費用に見合う効果が見えない」という社内の懸念で、検討が止まっていたとします。
この場合、同じサービス紹介資料を送り直すだけでは、止まった理由が解消されるとは限りません。誰が、何を心配しているのかを、担当者との対話から具体化する必要があります。
現場が心配しているのは、新しい入力作業が増えることかもしれません。管理者が知りたいのは、どの数字を確認できるようになるかかもしれません。予算責任者は、初期費用や継続費用と、期待できる改善のバランスを見ているかもしれません。それぞれに必要な説明が違います。
そこで、現在の作業と負担を整理することを最初のNAにします。次に、導入後に変わる作業と残る作業を、現場担当者と確認する。そのうえで、必要に応じて現場責任者を交え、小さく試す範囲、期間、評価項目を相談します。
顧客側の懸念が具体化され、導入を判断する条件が合意されたことが、前進の証拠になります。資料の送付は、その過程で実行した活動として別に記録します。試行の結果を見る担当者と、その後の判断の場まで決まれば、さらに具体的な検討になります。
こうした対話では、情報を整理する力と、相手が社内で進めやすい順番を考える力が必要です。ISが内勤の営業であることは、このような場面に表れます。
09本格運用には濃いリサイクルリード1000件以上を最低ラインに置きたい
リサイクルリードを軸にISを継続して稼働させるなら、最低でも一度は商談を実施し、その内容が記録された有効リード1,000件以上を、まず確保したい最低ラインと考えます。
ここでいう1,000件は、業界共通の必須条件でも、ザ・モデルが定めた数字でもありません。この記事で提案する、リサイクルリードを中心とした本格運用の目安です。必要な母数は、商材の単価、営業期間、顧客の数、担当者の稼働量などによって変わります。少数の重点企業を深く担当する営業や、新規開拓を担うISには、そのまま当てはめません。
それでも、一定の件数が必要だと考える理由は、リードの中に含まれる検討時期の違いです。過去に商談した会社が1,000社あっても、すべてが今月再検討できるわけではありません。今は契約期間中の会社もあれば、半年後に予算を考える会社もあります。相手にとって適切な時期を選びながら、継続的に接点を持てる母数が必要です。
運用量だけを考える簡単な例として、1,000件の再確認時期が6か月に均等に分散していると仮定すると、月に約167件が確認対象になります。100件なら、同じ仮定で月に約17件です。これは商談数や成果の予測ではなく、確認対象の件数を単純に割った試算です。実際には、接触頻度や必要な工数は顧客ごとに異なります。
少ない母数のまま専任担当者の架電数だけを確保しようとすると、同じ相手に必要以上の頻度で連絡する運用になりかねません。十分な母数があれば、時期や課題に応じて接触先を選びやすくなります。
ただし、1,000件は名簿の行数ではありません。重複する連絡先、担当者の異動で接点が途切れたデータ、明らかな対象外などを整理し、現実に再検討へつなげられる相手として数えます。同じ企業の担当者が複数登録されているだけで、独立した見込み案件が増えたと判断しないことも必要です。
商談履歴が残っていること、現在も対象として適切であること、再接触の理由を考えられること。この質を伴った1,000件以上があるかを、本格運用の前に確認したいのです。
10リードがない会社はテレアポから接点と商談履歴を貯める
過去の商談履歴を持つリードがほとんどないなら、まず取り組みたいのは、新規の接点と商談を増やすことです。ISの担当者を配置しても、継続して話せる相手や、会話の起点になる情報がなければ、リサイクルリードの運用は始められません。
そこでテレアポが選択肢になります。自社が支援できる課題を持ちそうな企業を選び、接点をつくり、商談へ進む。最初から購入意向が明確な相手にだけ出会うことは難しくても、対話を通じて課題や検討条件を把握できれば、その後の営業につながる情報が残ります。
新規開拓の段階でも、次の運用を見据えておきます。誰と話せたのか。何に関心があったのか。今回はなぜ商談につながらなかったのか。商談した場合は何を提案し、どこで止まったのか。後から使える情報として記録します。
ただし、電話で担当者につながったデータと、一度商談を行ったリサイクルリードは、分けて数える必要があります。企業名簿を購入したり、電話番号を大量に集めたりするだけでは、濃いリサイクルリード1,000件の条件を満たしません。接点をつくり、実際に商談し、内容を残す工程が必要です。
新規の接点をつくる方法は、テレアポに限りません。紹介、問い合わせ、展示会、ウェビナー、広告やコンテンツなども、自社の顧客に合わせて組み合わせられます。その中で、狙った企業と接点をつくる手段としてテレアポを位置づければ、ISへのつながりも設計しやすくなります。
そして、1,000件になるまで追客を待つ必要はありません。50件、100件の段階でも、今ある有効なリードにはNAを設定し、必要なフォローを始めます。母数が少ない段階では新規開拓に重心を置き、既存のリードは兼任や限られた稼働で丁寧に運用する。母数と業務量が増えてから、専任化を検討する順番です。
当然、新規の商談はその時点での受注を目指します。受注に至らなかった相手のうち、将来の検討余地がある情報を残すことが、リサイクルリードの蓄積につながります。
11AIに任せやすい業務はISの中にもある
AIの活用を考える際には、テレアポとISを職種名だけで分けず、具体的な作業に分けて見る必要があります。
SalesforceのAI SDRの説明では、CRM情報を使ったメールでのアプローチ、返信内容を踏まえた見込みの判定、日程調整、やり取りの記録などが挙げられています。AIが担える範囲は、文章の下書きだけにとどまりません。[3]
電話営業でも、案内内容が明確で、確認する条件や終了・引き継ぎの基準を整理できる業務は、自動化を検討しやすい領域です。ただし、メールでの対応機能があることと、電話で同じ水準の対応ができることは別に確認する必要があります。対象の商材と顧客に対して、実際に期待する品質で運用できるかを確かめるべきです。
テレアポにも、担当者につながるまでの工夫や、限られた時間で関心をつくる難しさがあります。そのため、テレアポ全体を簡単な仕事とみなすのは適切ではありません。範囲が明確で、結果を判定しやすい作業からAIを取り入れる考え方が現実的です。
同じ考え方はISにも当てはまります。過去の議事録を探す、要点を整理する、再接触の理由をまとめる、次の質問を考える、メールの文案をつくる。こうした作業はAIを使って支援できる部分です。人が一件ずつ履歴を読み返す負担を減らせれば、対話と判断に使える時間を増やせます。
ISだからAIを使えない、という話ではありません。ISの中にもAIが担いやすい仕事があり、それを取り入れたうえで、人が判断を担う範囲を具体化する必要があります。
12複雑なISをAIに任せきることが難しい理由
難しさが増すのは、複数の情報を踏まえ、何を確認し、どこまで進めるかを判断する場面です。
たとえば、商談履歴に「予算が合わず見送り」と書かれていても、顧客が本当に予算だけを問題にしていたとは限りません。担当者が社内で説明しきれなかった可能性もあれば、別の施策を優先した可能性もあります。過去の記録に書かれていない事情は、AIでも人でも、そのまま確定できません。
そこで必要になるのは、記録を根拠に仮説をつくり、適切な質問で確かめ、回答に応じて営業の進め方を変えることです。場合によっては、担当者が言葉にしきれていない懸念を整理する必要もあります。ただし、相手の本音を分かったつもりになるのではなく、あくまで確認を重ねます。
さらに、顧客の組織の中で、誰にどの順番で話すかという問題があります。担当者との関係を踏まえて上司の同席を依頼するのか、先に現場の懸念を整理するのか、今は予算の話を急がず課題を明確にするのか。提案内容だけでなく、進める順序の判断が必要です。
一社の中の判断だけでもありません。ISは複数のリードを担当するため、今週どの案件に時間を使うかも決めます。すぐ会ってくれそうな相手と、時間はかかるが自社との適合性が高い相手のどちらを優先するか。営業担当者の対応余力も踏まえ、今のタイミングで商談に進めるか。業務全体の判断が重なります。
AIによる回答や推奨を、そのまま顧客との約束に変えてよいかという問題もあります。AIが用意した試行プランが、自社で実行できる内容か。提示した条件が、提案や契約を担当する人の判断と合っているか。営業組織として責任を持てる形にする必要があります。
SalesforceのAgentforceも、設定された範囲を超える複雑な問題は人へ引き継ぐ設計を説明しています。[4] こうした設計を踏まえると、実務では、任せる作業と人が確認する判断を決めたうえで使うことが重要だと考えます。
リサイクルリードを理解し、NAを積み重ね、社内外を調整しながらパイプラインを生み出す。複雑なISには、これらが一体になって含まれます。個々の作業を自動化できることから、営業活動全体をそのまま任せられると判断するには、確認すべきことが多いのです。
13AIを使うほど商談データと運用ルールが重要になる
AIを活用するなら、まず参照する情報を整える必要があります。担当者名、商談内容、見送り理由、最終接触日、次回の確認事項が別々の場所に散らばっていると、適切な提案を作るための前提がそろいません。
情報があっても、事実と推測が混ざっていれば、誤った前提で再接触する可能性があります。古い条件をそのまま使うことも避けたいところです。誰が、いつ確認した情報かを残すことが、人にもAIにも役立ちます。
運用としては、AIが過去の商談を要約し、未確認事項と次の質問案を整理する。人が内容を確認して顧客と対話し、その結果を記録する。必要に応じてAIが記録の整理や次回準備を支援する。このように役割を組み合わせられます。
最初から全面的な自動化を目指すより、準備や記録の負担を減らし、担当者が顧客の検討を進める時間を確保するところから始める方が、効果を確認しやすくなります。その後、条件が整理された業務について、自動で進める範囲を広げていけばよいでしょう。
評価する際には、削減できた作業時間だけでなく、確認や修正の工数、対話の質、商談につながった割合も見ます。人が後から大きく修正する必要があるなら、その手間も含めて運用を考える必要があります。
AIを導入する前から商談データを整えておくことは、将来の自動化のためにも意味があります。テレアポや商談で得た情報を残す習慣が、その後のISとAI活用の共通の土台になります。
14ISの成果はNAからパイプラインと受注までつなげて見る
ISを架電数とアポイント数だけで評価すると、予定を入れやすい相手に連絡が偏ったり、顧客の検討が進んでいない打ち合わせが増えたりする可能性があります。活動量は必要な指標ですが、それだけではISの役割を十分に測れません。
まず、運用できる有効リードがどれだけあるかを確認します。次に、顧客と対話できた件数、NAが設定されているか、期限内に実行できているか、重要な未確認事項が解消されているかを見ます。
そのうえで、再商談につながった件数、営業が受け入れた有効商談の件数、新たに生まれたパイプラインの金額を追います。さらに、その案件が次の段階へ進んだ割合や、一定の期間を経た受注件数、受注額まで確認します。
このとき、アポイント、実施済みの商談、営業が案件として受け入れた商談を区別しておくと、どこで止まっているのかが分かりやすくなります。営業へ渡す条件も、「顧客の課題」「適合性」「次に話す目的」「検討状況」などを基に、関係者でそろえておきます。
パイプライン金額は売上の確定額ではありません。見込み金額をどの根拠で置くか、どの段階になったら案件として数えるかを決め、根拠の薄い金額を積み上げないようにします。同じ案件で二回目の打ち合わせをしたからといって、新規案件がもう一件増えたと数えるのも避けます。
新規開拓から生まれた案件と、リサイクルリードから再開した案件を分けて見れば、どちらに改善余地があるかも確認できます。一方で、最終的な受注には営業担当者の提案や商品との適合性も関わるため、ISだけに結果のすべてを負わせず、部門をまたいで改善します。
日々の行動と、その先の事業成果をつなげて見る。これによって、NAをこなすことが目的にならず、顧客の検討を進めるための運用にできます。
15まず自社にどの段階の営業基盤があるかを確認する
ISを強化したいと思ったら、最初に確認したいのは、今の自社に何が蓄積されているかです。まだ接点が少ないのか。名刺や連絡先は多いけれど、商談の情報が少ないのか。一度商談した顧客が数多くいるのに、その後の連絡が止まっているのか。状態によって、優先する仕事は変わります。
接点が少ないなら、テレアポなどで新規の相手と出会い、商談をつくるところから始めます。連絡先は多いけれど情報が薄いなら、対話とヒアリングを通じて、誰にどのような課題があるかを把握します。十分な商談履歴が眠っているなら、見送り理由と再検討の条件を整理し、NAを設定して運用を再開します。
そして、リサイクルリードを中心にISを本格運用するなら、最低一回の商談内容が残った有効リード1,000件以上を、まず目指したい。その過程でも、今あるリードの追客を続け、新規開拓と情報の蓄積を並行して進めます。
テレアポがつくった最初の会話を、その場限りにしない。商談で得た情報を残し、見送りになった理由を理解し、相手に意味のあるNAを積み重ねる。その営業活動を継続できるようにすることが、ISの大切な役割です。
AIは、その中の多くの作業を支援できます。どこまで任せるかを考えるには、まず人が何を判断し、顧客と何を合意し、何をもって前進とするのかを明確にする必要があります。
ISがザ・モデルの要になるのは、こうして顧客との接点、商談の情報、営業の次の行動をつなぎ、将来のパイプラインを生み出していくからです。営業を強くするために、自社には何件の連絡先があるかに加えて、次の会話につながる商談履歴が何件残っているかを、確認してみてください。
参考資料
RINGO PIPELINE
次の商談につながる営業の仕組みを、
ここから。
これからリードを増やしたい。過去の商談情報を整理したい。リサイクルリードの追客や、SFAの運用を前に進めたい。自社の営業基盤に合わせた進め方をご相談ください。
営業体制について相談する →RINGOパイプラインのサービスを見る →