あの人が出ると決まる、という商談があります。話し方が上手く、相手の空気を読み、その場で切り返しを思いつく。見ていて気持ちのいい商談です。ただ、その人が休んだ月、辞めた月に、売上はそのまま落ちます。
当社は商談そのものを代行する会社なので、この問題を避けて通れません。担当者によって受注率が倍も違うなら、お客様に毎月同じ品質の商談をお約束できないからです。そこで当社が積み上げてきたのは、話術ではなく、誰が出ても同じくらいの打率で勝てる道具を用意し、磨き続けることでした。
01魔法のような商談は、ビジネスにならない
個人の腕で取る受注は、その場では成果に見えます。けれど、なぜ決まったのかを本人も説明できないことが多い。説明できないものは、人に渡せません。渡せないものは、増やせません。
事業として商談を回すなら、問うべきは「一番うまい人が何件取ったか」ではなく、「新しく入った人が、同じ資料と同じ台本で何割取れるか」です。トップの受注率が40%で、ほかのメンバーが10%なら、組織の実力は10%のほうに近い。商談の数が増えるほど、平均の打率が売上を決めるからです。
誰が商談しても大体同じような打率で勝てる。この再現性があって初めて、商談数を増やせば受注が増える、という計算が成り立ちます。採用も、外部への委託も、その計算の上でしか判断できません。
02商談担当に負け戦をさせない
商談に出る担当者は、会社の代表として一人で相手の前に立ちます。そこで想定していない質問を受け、手元の資料では答えられず、相手の表情が曇っていく。この経験を何度か重ねると、担当者は商談そのものを怖がるようになります。
これは担当者の力量の問題ではありません。準備の足りない状態で送り出した側の問題です。武器を持たせずに戦場へ出せば、負けるのは当然です。負けが続けば自信を失い、声が小さくなり、さらに決まらなくなる。商談の受注率が個人の気持ちに左右されてしまう組織は、たいていこの順番で崩れていきます。
だから当社は、商談に出す前に勝てる道具を揃えることを、管理する側の仕事だと考えています。目標は、この資料とこの台本とこの打ち返しがあれば100%勝てる、と言い切れる状態です。現実には100%には届きません。それでも、そこを目指して作るのと、ほどほどで止めるのとでは、半年後の受注率がまったく違ってきます。
03磨くのは、商談資料・スクリプト・打ち返し集の3つ
再現性をどう作るか。答えは地味で、商談資料、商談スクリプト、打ち返し集の3つを磨き続けるしかありません。それぞれが担う役割は違います。
| 道具 | 役割 | 商談のあとに見直すところ |
|---|---|---|
| 商談資料 | 相手に見せるもの。課題の整理、解決のしかた、導入後の姿、費用を、順番に理解してもらう | 相手が質問を挟んだページ、読み飛ばしたページ、もう一度見せてほしいと言われたページ |
| 商談スクリプト | 担当者が話す順番と言葉。ヒアリングの質問、資料のどこで何を言うか、最後に何を提案するか | ヒアリングで聞き漏らした項目、話が長くなった箇所、相手の反応が良かった言い回し |
| 打ち返し集 | よく出る質問や懸念への答え。「高い」「今は時期じゃない」「他社と比べたい」などへの返し方 | 新しく出た質問、答えたが納得されなかった質問、答え方を変えたら通った質問 |
3つは一度作って終わりではありません。商談を1件終えるたびに、どこで相手の反応が変わったか、どこで詰まったかを記録し、次の商談の前に反映します。資料の1枚を差し替える、スクリプトの質問を1つ足す、打ち返しを1行書き換える。その程度の小さな修正を、毎週続けます。
打ち返し集は、特に差がつきます。商談で出る懸念は、商材ごとにかなり偏っていて、同じ質問が何度も来ます。最初の数十件の商談で出た質問を書き出し、通った答え方を残していくと、多くの場面はそこで答えられるようになります。担当者がその場で考える必要がなくなれば、商談の質は担当者の機転に左右されにくくなります。
04買う人のペルソナごとに、3点を作り分ける
同じプロダクトでも、買う人によって刺さる話は変わります。たとえば業務システムなら、経営者は費用対効果と導入までの期間を気にし、現場の責任者は今の業務がどう変わるかを気にし、情報システムの担当者はセキュリティと既存システムとの連携を気にします。
この3者に同じ資料、同じ台本で話すと、どの相手にも半分しか響きません。プロダクトを購入するペルソナごとに、商談資料・商談スクリプト・打ち返し集を分けておくと、商談の確度は上がっていきます。経営者向けの資料は冒頭に費用と効果を置き、現場責任者向けは導入前後の1日の業務を並べる。打ち返し集も、経営者からは「投資回収はいつか」、現場からは「入力の手間は増えないか」と、来る質問そのものが違います。
正直に言えば、全ペルソナ分を揃えるのは工数がかかり、現実的に難しい場面もあります。当社では、商談数の多いペルソナから順に作り分けます。最初は1種類の3点セットで始め、商談の記録を見て、受注率が明らかに低い層が見えたらその層専用のものを作る。この順番なら、手間をかけた分だけ受注率に返ってきます。
05打ち返し集に無い質問は「後出しジャンケン」で受ける
どれだけ打ち返し集を磨いても、載っていない質問は来ます。しかも商談の担当者は、そのプロダクトの業務に精通したプロではない場合が多い。細かな仕様、業界特有の運用、個別の契約条件を聞かれて、その場で正確に答えられないことは当然あります。
そこで当社が使っているのが、「後出しジャンケンの戦法」です。その場で無理に答えず、こう返します。
お客様既存の基幹システムとはCSVで連携できますか。項目の対応表もいただけますか。
担当者大事な点ですので、ここは現場の担当者に確認してからお戻ししますね。明日の夕方までに、対応表とあわせてメールでお送りします。
曖昧な答えでその場をしのぐと、あとで訂正が必要になり、信頼を落とします。知ったかぶりで答えて外れれば、商談そのものが壊れます。持ち帰ると言えば、相手の心象を悪くせず、その質問を切り抜けられます。むしろ、確認してから正確に答えてくれる会社だという印象が残ることも少なくありません。
使うときに守っていることが3つあります。
- いつまでに返すかを、その場で言う。期限の無い「確認します」は、相手には先送りに聞こえます。
- 持ち帰った質問は、その日のうちに担当部署へ回し、期限より前に返す。
- 返した答えを、打ち返し集に1行追加する。同じ質問が次に来たときは、その場で答えられるようにします。
3つ目が肝心で、後出しジャンケンは逃げ道ではなく、打ち返し集を育てる入口です。持ち帰った質問の数が月ごとに減っていけば、道具がきちんと磨かれている証拠になります。
06商談の着地点を、受注プロセスに合わせて決める
商談を「受注できたか、できなかったか」だけで見ると、決まらなかった商談はすべて失敗になります。けれど、高額で稟議の要るプロダクトが、初回の商談で受注に至ることはほとんどありません。大切なのは、その商談をどこに着地させるかを先に決めておくことです。
着地点はプロダクトによって変わります。
| プロダクトの性質 | 初回商談の着地点 |
|---|---|
| 単価が低く、担当者の判断で決められる | その場で受注する、または申込書を送る |
| 中程度の単価で、上長の承認が要る | 見積もりを送り、承認の時期と決める人を確認する |
| 高額で、複数部署の稟議を通す | 決裁に関わる方が同席する、より深い2回目の商談の日程を決める |
見積もりを送る、受注する、2回目の商談の日程を確定させる。どれを着地点に置くかは、そのプロダクトの平均的な受注プロセスとリードタイムから逆算します。受注まで平均3か月かかる商材なら、初回で受注を迫るより、次の打ち合わせの日程をその場で決めるほうが、結果として受注は早まります。
当社はこれを、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)の考え方で組み立てています。受注までの工程を書き出し、各工程の通過率と日数を記録し、詰まっている工程を見つけて直す。初回から2回目への移行率が低ければスクリプトの締め方を、見積もり後の受注率が低ければ見積もりの出し方や送るタイミングを見直す。着地点を決めておくと、商談がどこで止まっているかが数字で見えるようになります。
着地点は、スクリプトの最後にも書いておきます。「本日の内容をもとに見積もりをお送りします。ご確認いただく方は、どなたになりますか」のように、次の一手と相手の社内の動きを確かめる一言で終える。担当者が商談の締めで迷わなくなります。
07まとめ:磨き続けるほど、受注率と競争力が上がる
RINGO商談代行の商談の考え方を、まとめておきます。
- 魔法のような商談に頼らず、誰が担当しても大体同じ打率で勝てる再現性をつくる。
- 商談担当に負け戦をさせない。勝てる道具を揃えてから送り出すのは、管理する側の仕事。
- 道具は商談資料・商談スクリプト・打ち返し集の3つ。商談のたびに記録し、小さく直し続ける。
- 購入するペルソナごとに3点を作り分けると、確度が上がる。商談数の多い層から順に作る。
- 打ち返し集に無い質問は「現場の担当者に確認してからお戻ししますね」で持ち帰り、答えを打ち返し集に足す。
- 商談の着地点を、受注プロセスとリードタイムに合わせて決め、工程ごとの数字で改善する。
これらを磨きながら商談を重ねていくと、時間が経つほど受注率は上がり、時間が経つほど競争力がついていきます。打ち返し集の1行、資料の1枚は、競合がすぐには真似できない、商談の現場で積み上げた資産だからです。個人の才能は辞めれば消えますが、磨いた道具は会社に残ります。
RINGO SHODAN
商談を、仕組みごと引き取ります。
獲得済みのアポイントに対して、商談・ヒアリング・提案・クロージングまでを代行します。商談資料・スクリプト・打ち返し集の整備から一緒に進め、商談の記録はSFAに残して納品します。いまの商談数と受注率をお聞かせください。
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