AIが電話をかけてアポを取る。技術的にそれができるようになったとして、どの会社でも人の代わりにAIを使えばよいのかというと、僕はそうは思っていません。
素性もよく分からない数万件のリストに片っ端からコールドコールするのであれば、1コールあたりのコストが安いAIで費用対効果が合う可能性はあります。けれども、決められた少ないリストを、精度良く回さなければいけない場面では、良い人がかけた方が打率は確実に高い。そのときAIを選ぶ理由はなくなります。この違いがどこから来るのかを書いておきます。
■ AIテレアポで費用対効果が合うのは、どんなときか
AIテレアポが力を発揮しそうなのは、リストが数万件あって、1件ごとの見込み度がよく分からないケースです。業種や地域で機械的に集めた法人リストに、上から順番に電話をかけていく。そういう使い方なら、アポ率が低くても母数で補えます。
この場面で効いてくるのは、アポ率よりも1コールあたりの単価です。人なら1日にかけられる件数には限りがありますが、AIは同時に何本でも発信できます。一つひとつの会話が多少ぎこちなくても、数万件を短期間でさばけて、1件あたりのコストが十分に安ければ、アポ1件あたりの獲得単価は合うかもしれません。
逆に言えば、AIの強みは「安く、たくさんかけられる」ことに寄っています。リストが余るほどあって、断られた相手をどんどん飛ばしていける前提があってこそ成り立つやり方です。
■ 少ないリストでは、1件の空振りがそのまま機会損失になる
ところが、実際の営業現場では、リストが限られていることの方がよくあります。狙いたい業界の上位企業300社、展示会で名刺交換した数百件、過去に問い合わせがあったまま止まっている休眠リード。どれも件数は多くなく、代わりのリストを簡単には用意できません。
こうしたリストは使えば減っていきます。最初の電話で用件がうまく伝わらなかった、受付で切られた、担当者に冷たい印象を残した。そうなると、同じ会社にもう一度かけるハードルは一気に上がります。数万件のリストなら次に行けば済む話でも、300社のリストでは、1社を落とすたびに残りの可能性が確実に減っていきます。
リストが少ないときに問われるのは、何件かけたかではなく、1件ごとにどれだけ確実に会話を前に進められたかです。
■ 打率を分けるのは、電話口でのその場の判断
良いアポインターと、そうでない架電の差は、トークスクリプトの文面よりも、電話口での判断に出ます。
受付の方の声色から、今は取り次いでもらえないと察して、担当者の名前と戻りの時間だけ聞いて引く。担当者が「今は忙しい」と言ったときに、本当に断っているのか、時間さえ合えば話を聞くつもりなのかを聞き分ける。相手が口にした課題を拾って、用意していた説明の順番を入れ替える。どれもスクリプトには書き切れない動きです。
こうした判断を積み重ねた結果が、そのまま打率になります。一度目で取れなくても、次につながる情報を持ち帰ってくる。限られたリストでは、この「次につなげる力」があるかどうかで、最終的に取れるアポの数が大きく変わります。
■ 300件のリストで比べると、安さはほとんど効いてこない
分かりやすくするために、仮の数字で考えてみます。300社のリストを1回ずつ回すとして、人がかけた場合のアポ率を3%、AIがかけた場合を1%とします。人なら9件、AIなら3件です。
コストの差はどうか。テレアポモンスターの1コール80円で300コールかけると24,000円です。仮にAIが1コール10円だったとしても3,000円で、差は2万円ほどにしかなりません。その2万円を節約した結果、アポが6件少なくなる。1件の商談から受注につながったときの金額を考えれば、この差を取り返すのはまず無理です。
同じ計算を3万件のリストでやると、話が変わります。コールの単価差がそのまま数十万円単位で積み上がるので、アポ率の差を単価の安さで埋められる可能性が出てきます。AIの安さが意味を持つのは、件数が多いときだけだということが、数字を置いてみるとよく分かります。
■ リストの件数と1件の重さで使い分ける
AIか人かは、技術の新しさで決めるものではなく、手元のリストの性質で決まります。目安にしているのは次の2つです。
- リストが数万件あり、断られても次に行けて、1件の価値がそれほど高くない。このときは、コールの単価を下げられる手段が向いています。
- リストの件数が限られていて、狙う会社が決まっていて、1件の受注金額が大きい。このときは、1件ごとの打率が高い人に任せる方が、結果として安くつきます。
BtoBの新規開拓で、後者に当てはまる会社は少なくありません。「AIを使えばテレアポのコストが下がる」という話を聞いたときは、まず自社のリストが何件あって、1件を落とすことがどれくらい痛いのかを確かめてから判断することをおすすめします。
■ まとめ:精度が求められるリストほど、人が回す
数万件の有象無象のリストにコールドコールをかけるなら、AIテレアポはコスト次第で費用対効果が出るかもしれません。けれども、決められた少ないリストを精度良く回す場面では、良い人がかけた方が打率は高く、AIを選ぶ理由はなくなります。
リストは使えば減る資産です。件数が限られているほど、1件ごとに会話を前に進められる人をアサインする意味は大きくなります。テレアポモンスターは、その1件を取りにいく人をそろえて、運用まで一緒に回しています。